菅総理の功績と菅後の日本の政治(最終回)
8.外交問題に関する功罪
◆菅さんは外交分野は不得手の方だろうが、基本的には安倍さんが築いた外交路線を引き継ぐことで、大きな失策をすることなくこなしてきたと言えるだろう。まず、日米豪印クワッドの推進、自由で開かれたインド太平洋地域の構築、所謂対中包囲網の推進で、日米首脳会談における中国脅威論の中で台湾を明示したことは画期的であった。対韓国との慰安婦問題、所謂徴用工問題では膠着状態が続いているが、妥協することなく毅然とした態度をとり続けてきたことは評価できる。ただ、北朝鮮との間の拉致問題は全く進展を見せず、忸怩たる思いであっただろうが、次期政権に委ねるしかない。
◆菅総理は2020年10月に、「2050カーボンニュートラル」を目指すと宣言。世界先進国の見えない圧力もあって、宣言せざるを得ない状況にあったとは言え、並大抵の努力では実現できない。太陽光、風力などの自然エネルギーでは不利な状況にある我が国土にあって、電力供給構造の転換は厳しい状況にあり、大胆な投資によるイノベーションの創出と言った取組みを、強力に加速することが必要で、今後の政権への大きな課題となって残る。
◆アフガニスタンからの邦人避難救助は先進各国と比較しても後塵を拝する形となった。「国民の命と財産を守り抜くのが国家の基本的役割」とするならば、平時の外交において、緊急時の対応策(自衛隊出動も含めて)を講じておくことは国家基本戦略上、必須条件である。安全保障・インテリジェンス部門で法体制の整備と外交・防衛一体となった不断の努力が求められる。
【おわりに】
★1年という短期間に終わった菅政権の実績とその功罪について縷々述べてきたが、国内問題ではその他にも多くの実績と課題を残した。まず就任早々公約した「携帯電話料金値下げ」があったが、2021年には大手通信キャリアの値下げ料金プランが出揃った。次いで「不妊治療の保険適用」を公約した。この課題も2021年1月から現行の助成制度を拡充し、2022年4月の保険適用開始を目指す。
★また「電波オークション制度の一部導入」について、電波・放送行政の透明性や公平性を確保しながら、電波の有効利用を強力に推進するとし、電波オークション制度の導入を含めて、新たな周波数割り当ての在り方を検討する方向を示した。このように短期間の中で目一杯仕事をしてきたはずだが、一般にはあまり評価されていない。しかし、皮肉なことに辞任を表明した後に、次期総裁選候補らの選挙運動の中で、菅総理の支持率が10%もあがった。
★安倍・菅路線の跡を引き継ぎ、明確に旗幟を鮮明にしているのが高市候補である。理念・政策を通して目指すところが見えてきた。ひょっとすると日本のサッチャーになる可能性を秘めている。しかし、日本のメディアは冷ややかだ。最も人気があり、総裁選のトップを走る河野氏だが、一般大衆に迎合したポピュリズム政権で、衆院選の顔としてはいいかもしれないが、所謂リベラル的左傾の小石河政権では対韓、対中政策で、現実とのギャップで大きくブレるだろう。参院選までもつかどうか・・(本稿終り)
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