2022年4月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
無料ブログはココログ

最近のトラックバック

« 2021年1月 | トップページ | 2021年3月 »

2021年2月

2021年2月13日 (土)

郷土の味覚と珍味 (3)

5. 山梨(甲府)の煮貝
20代の時、縁あって甲府に行く機会が増えた。そこで煮貝というものに出会った。何かと言えば、「アワビ」の醤油漬けで甲府の名産だと言う。なんで海のない県で「アワビ」なんだ?そもそもアワビは刺身か蒸したものだろう。しかもコリコリした身の部分よりまわりの深緑色の肝の部分こそ最高だという。普通は食べない部分だ。ところが勧められて恐る恐る口に入れてみて驚いた。まさに初めて出会う食感、得も言われぬ風味、これはお酒のお伴に最高の逸品だと確信した。
Photo_20210213145501  甲府の煮貝

煮貝は江戸時代、駿河湾で獲れたアワビを加工し、醤油漬けにして木の樽に入れ、馬の背に乗せて甲斐に運んだところ、馬の体温と振動によって醤油がアワビに程よく染み込んで、甲府に着くころにはちょうど良い味に仕上がったとする伝承がある。現在では大半が輸入品とのことだが、それでもかなり高価で深緑色の肝の部分はなかなかお目にかかれなくなった。

6. クジラの尾の身の刺身
鯨」といえば、60代・70代以上の世代には切っても切れない食材だ。学校給食で、家庭の食卓で、牛肉や豚肉の代わりにいやというほど食べた(いや、食べさせられたと言った方が正確か)。ところがある時期から殆ど口に入らなくなった。いうまでもなく、世界的な反捕鯨運動の影響だ。そんな中で、細々と並ぶ鯨肉をスーパーの片隅で見つけた時に喜んで買い求めた。しかし、子供の頃慣れ親しんだ味とはイマイチ違う。次に冷凍したものを特別に注文した。半分凍った鯨肉を醤油に漬けて口に入れた時、やっと昔の懐かしい味覚が蘇った。
Photo_20210213145402 鯨の尾の身の刺身
しかし、鯨の刺身は何と言っても、昔渋谷の鯨専門料理店で食したナガスクジラの尾の身の刺身が最高だ。淡いピンク色に網状のサシが入った霜降りの身。口に入れると口内の温度でとろけて、旨味が口いっぱいに広がる。「まぐろの大トロと馬刺しの良いとこ取り」と言われる一品だが、確かに舌の上でとろける尾の身の刺身は絶品以外の何物でもない。

◆本シリーズの(1)で紹介したタイラギ、それを買い求めた地元のスーパーは大変ユニークで、小田原漁港で水揚げされた様々な魚介類が生きたまま陳列されることもある。クジラの冷凍切り身(塊)はいつでも買うことができる。下の写真はクジラの赤ちゃん?ではなくて3mほどのカジキマグロ。さすがに一尾丸ごと買う人はいないだろうが、小分けにしたものが食卓に並ぶ。
Photo_20210213145301

◆さて、3回に亘って各地の郷土の味、珍味などについて述べてきたが、この辺で終了する。江戸時代から言い伝えられる日本三大珍味は、越前のウニ、三河のこのわた、長崎のカラスミということだが、現代の三大珍味を自分の知る狭い範囲ながら独断で選んでみた。

 〇山梨の煮貝の肝 〇トラフグの白子焼 〇長崎のカラスミ (終わり)

2021年2月12日 (金)

郷土の味覚と珍味(2)

3.「デベラ」をご存知?
酒やビールのお伴に、乾きものがよく利用されるが、もっとも好きなものが「デベラ」だ。小さい頃に食べたような記憶もあるが、定かではない。明確に知ったのは40歳を過ぎた頃だろうか。仕事で山陽地方に滞在したころ、居酒屋さんで勧められたある乾きものに出会った。掌サイズの細いカレイのような干物を軽く焙ったもの。思わず「これは旨い!」、やや硬いが噛むと口中に独特の香りと豊かな味がパーッと広がる。名前は「デベラ」という。特に有名なのが尾道の冬の風物詩といわれる「デベラ」だそうだ。

「出平鰈(でべらかれい)」と呼ばれているが、正式には「タマガンゾウヒラメ」。手を広げたような形なので「手平」、「デメヒラメ」が訛って「デベラ」、さらに訛って「デビラ」など諸説あるようだ。瀬戸内海沿岸で収穫されるが、近年は減少しているとのこと。
2_20210212094301 (デベラ)

大きいものは骨が固いので、木槌などで叩くとよいそうだが、10㎝前後が適当な大きさ。焼く前に何か所か背骨を折り曲げ、2分ほど火を通す。頭の先から尻尾までバリバリ食べられる。味付けはそのままでもよいが、七味・マヨネーズが好みだ。ネットを利用して産地から取り寄せたりしている。

4「姫貝」の干物
子供の頃、大人が酒のつまみにしている貝の干物にちょっかい出して口に入れた。甘みが強く、秘かに渋みのようなものがあり、軽く焙った時にでる香りや濃厚な味は忘れられない一品となった。名前を「姫貝」という。長じて酒類は人並みに嗜むほどになったが、この「姫貝」の干物は殆ど見かけることがなくなった。
数年前、築地場外市場に出かけた時、「姫貝」のことを思い出して、大きめの干物屋さんの店頭で物色したが見つからない。年長の店員さんに尋ねたら、奥から大事そうに新聞包みを持ってきた。やっと見つかった。早速買い求め、帰宅後軽く焙って食した時、ようやく遠い過去の懐かしい味が蘇った。
2_20210212094501 (姫貝)
「姫貝」という名称の貝が存在するものだとズーッと思い続けていたが、実はそうではなかった。実際はよく知っている「バカガイ」(通称アオヤギ)の剥き身をそのまま乾燥させたものを「桜貝」、釜足を引き延ばして乾燥させたものを「姫貝」と呼んでいるそうだ。素敵な名称に勝手にイメージを膨らませていた? バカガイや青柳なら寿司屋でよく食べたものだが、己の浅学菲才を恥じ入る次第。落語じゃないが、「イカ」と「スルメ」の関係と同じだ。しかし、バカガイなら今でもたまにみるが、干物にしたものが珍重され、高く売れるのであればもっと付加価値をつけて販売促進したらいいと思うのだが・・絶滅危惧種になっても困るし。バカガイは日本全国に分布しており、東京湾、伊勢湾、瀬戸内海が主要産地。但し、加工した「姫貝」の産地は大分が県が有名とのこと。

Photo_20210212094501  (姫貝)
なお、 蛇足ながら「バカガイ」を「青柳」と呼んだのは江戸時代の江戸前寿司職人が、音声でそのまま耳に伝わることを嫌い、当時の江戸湾周辺における集積地であった上総の国市原郡青柳(現千葉県市原市青柳)の地名を使って、これを雅称として呼び代えたのが始まりだったことは有名な話。(続く)

 

 

2021年2月10日 (水)

郷土の味覚と珍味(1)

郷土長崎の味と言えば、何と言ってもカステラにチャンポン、皿うどん。今や全国区となって、知らない人はまずいないほど。本稿ではそれは横に置いといて、自分が子供の頃食べた懐かしい味、珍味などについて、思いつくまま書き残しておきたい。

1.マテガイとアゲマキ
子供の頃、食卓にはアサリの吸い物がよく出た。シジミより多かった。当然海が近いという条件があったからだろう。ところが一時期マテガイの吸い物がよく並ぶようになった。長方形の薄くて白い殻の二枚貝。味が上品で旨い。後になって知ったバタ焼や酒蒸しより、単純で素材そのものの味、今で言うところの潮汁というものだろう、これが最高だ。
マテガイは有明海が名産地だったが、今では殆ど獲れなくなったという。マテガイは日本では有明海に限らず、波の穏やかな内海の砂地で多く見られるというが、関東に居住して以来、魚屋やスーパーの魚介売り場で見たことは殆どない。
2 マテガイ

マテガイに似た貝でアゲマキというのがある。これはマテガイよりやや大きくズングリ、ムックリしており、やや茶色っぽい。味はマテガイよりもう少し濃厚だったと記憶している。このアゲマキは有明海が産地で、1988年に776トンの水揚げがあったものの、その後様々な要因で減少し、関係者の必死の努力も功を奏していないという。
Photo_20210210140601 アゲマキ

2.タイラギ
有明海の貝の話のついでにタイラギを採り上げたい。父親の里が福岡県の有明海に面した地域に近かったこともあり、たまに食する機会があった。酒粕に漬けた大きな貝柱は高級珍味となり料亭などでも出されたそうだが、親戚から送ってもらう以外に殆ど口にすることは無かった。ところが最近近くのスーパーの魚介売り場で目にする機会があったので、大きな殻付きのまま購入した。大きな割に食に適するところは直径4~5㎝ほどの貝柱のみ。あとは廃棄処分となる。その貝柱をバター焼きで食したが、ホタテより味が濃厚で大変美味である。しかし、タイラギは酒粕に漬けたものが絶品だ。酒粕自体が旨いので、最後まで綺麗になくなってしまう。今はネットで取り寄せられるので大変便利(笑)
Photo_20210210140603 タイラギ
タイラギは大型の二枚貝で、名前の由来は「平貝(たいらがい)」が転訛したものだと言う。かつては東京湾、伊勢湾、三河湾、瀬戸内海、有明海などが主要な生息地だったが、現在では三河湾、瀬戸内海の一部などに限られているそうだ。私がスーパーで買い求めたものは愛知県産とあったので、三河湾のものだろう。大きさは殻の長さが30㎝以上、三角形の奇妙な形だ。かつて有明海の諫早湾沿岸地域で1990年頃まではよく獲れたそうだが、干拓事業との関連もあって、現在では略ゼロだと言う。残念な話だ。(続く)

 

« 2021年1月 | トップページ | 2021年3月 »