「保守」と「リベラル」を考える
◆今年の「新語・流行語大賞」の候補30語がノミネートされた。小池百合子氏が喋った「アウフヘーベン」、「共謀罪」、「忖度」、「フェイクニュース」・・これらが候補に上がった理由はよくわかる。ところが全く意味も分からない、初めて聞くような言葉がいくつかあった。それは毎回のことだから年のせいだと気にもしていない。今回も政治に関わる話題で恐縮だが、昔からよく使われてきた「リベラル」という言葉。今年ほどよく耳にし、目にしたことはかつてなかった。この「リベラル」が候補に上がってもよかったかなと思った次第。
◆日本の「リベラル」はやや左傾化した勢力に対して使われるケースが多い。何故だろうか。本来リベラル(Liberal)」とはLiberty(自由)の派生語で、「自由主義的」の意である。日本の自由民主党は英文ではLiberal Democratic Party。従って自民党の方がより正しく「リベラル」を使っていると言える。ところが、リベラルには「個人の自由や個性を重んじ、寛大な心の広い」という意味も備えている。また自由を意味するFreedomに比べて「抑圧からの解放を意識して使われることが多い」と言う。
◆日本の自民党はタカ派(=保守派)とハト派(=リベラル派)の二つの勢力が存在し、一強体制を維持してきた。アメリカの共和党(Republican Party)は一般的に保守主義で、民主党(Democratic Party)はリベラル的立場をとっていると言われる。要するに民主党は労働運動、労組重視、マイノリティ、死刑廃止・不法移民容認・同性愛容認・宗教多様化容認等の立場に立って、共和党に対峙し、その政治姿勢が「リベラル」と目されてきた。然し、決して社会主義を目指すものではない。こうしてアメリカではこの二大政党が互いに切磋琢磨して、政権交代を繰り返してきた。
◆日本のかつての民主党の英文名は Democratic Party of Japan 、また民進党はThe Democratic party と称した。リベラルという言葉は使っていない。ところがかつての民主党や改称した民進党の左派系の人達、及び分裂して誕生した立憲民主党、社民党などをひっくるめてリベラル派と呼んでいる。本来リベラルとは路線や枠組みの問題ではなく、「何をやるか」である。アメリカの民主党が誰を対象に何をやるか、はっきりした目的・政策を持っているのに対し、日本のリベラル系と言われる左派系が路線問題や観念的対立に明け暮れ、離合集散を繰り返しているのとは対照的だ。
◆石橋湛山、鳩山一郎、吉田茂など戦後日本の名だたるリーダーたちは、第一級のリベラリストだった。石橋湛山は「斬新な思想は自由な社会から生まれる。将来の為に、言論の自由は徹底して確保しておかなければならない」と述べた。左派も含め、あらゆる主張に耳を傾け、政策に盛り込んでいくという姿勢を持つ保守の健全な精神を持つ人たちが、リベラルと呼ばれていたという。ところが、現在多くの人がリベラルと聞いて想起するのは、左派的なリベラルだ。「冷戦終結以降、かつての社会主義者や市民運動家がリベラルと言う名の心地よい椅子に座り始めた。『リベラル』に保守派リベラルと革新的リベラルのふたつの流れができてしまったのが今日の混乱の始まりではなかろうか。
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