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2016年10月 5日 (水)

黒澤監督作品「生きる」に感動

Photo◆雪の降る夜、公園のブランコに揺られて、「ゴンドラの唄」を口ずさむ初老の男性。この名シーンは眼に焼き付いて離れない。TVで何度か見て、ストーリーは分っているつもりでいたが、劇場映画としてデジタル映像と音声で鮮やかに蘇った名画「生きる」を全編通して(143分)鑑賞し、改めてこの映画の素晴しさに感動させられた。「人間」は同じ作品を観ても、その時の年齢、立場、環境等によって受け止め方が大きく異なることを実感。

◆東宝が全国で展開している「午前十時の映画祭7」で、現在上映中の「生きる」(昭和27年・1952作)を鑑賞してきた。粗筋は書くまでもないが、癌を宣告され、余命幾ばくもないと悟った市役所勤務のしがない課長である主人公(志村喬)がこれまでの無意味な人生を悔い、最後に市民が要望しながら、なかなか実現しなかった小公園の建設に奔走する。死を目前にして体の不調も省みず、活動する真摯な姿を描いたヒューマンドラマだ。同時にお役所仕事に代表される官僚主義、形式主義を批判した社会派ドラマでもあることを今回改めて認識した。「日本映画史上ベスト・テン」(キネマ旬報発表)に何度もランクされ、各種映画賞を受賞し、内外ともに評価の高い傑作であることに納得がいく作品である。

Photo_2◆「ゴンドラの唄」を歌うのは、雪の公園のブランコに揺られたシーンだけではなかった。「死」への不安から、これまでの自分の人生の意味を見失い、貯めた金をおろして、居酒屋で知り合った三文小説家(伊藤雄之助)の案内で、夜の街をさまよう。昭和26、27年当時の場末の居酒屋から、パチンコ、ダンスホール、キャバレー、ストリップ劇場などの姿が描かれている。銀座の大きなキャバレーと思われる店で、ブーちゃんこと市村俊幸が演じるジャズピアニストが弾くチャールストン、ブギウギなどの陽気なリズムに合わせて嬌声が飛び交うシーンは戦後わずか6、7年しか経っていないのに、ここまでアメリカナイズされていたのかと、日本という国の変わり身の早さに驚かされる。

◆市村が客にリクエストを求める。志村が押しつぶされたような声で「いのち短し・・」とつぶやく。市村は場違いと思いながら、ジャズ風にアレンジした「ゴンドラの唄」を弾き始める。しわがれ声でしみじみと歌いだす志村の歌声に店内は静かになり、ブルースを踊り出す客も現れる。歌いながら志村の眼に涙が溜まり、ツーっと一滴頬を伝う。この辺も泣かされるシーンだ。


【ゴンドラの唄】
 (作詞:吉井勇  作曲:中山晋平  大正4年)

いのち短し 恋せよおとめ  朱き唇 あせぬ間に
熱き血潮の 冷えぬ間に 明日の月日のないものを

いのち短し 恋せよおとめ  黒髪の色 あせぬ間に
心のほのお 消えぬ間に  今日はふたたび来ぬものを

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