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2016年4月23日 (土)

映画「エヴェレスト 神々の山嶺」を観て

◆皇太子ご一家も鑑賞されたという映画「エヴェレスト神々の山嶺」を観てきた。第11回柴田錬三郎賞を受賞した夢枕獏の小説「神々の山嶺」を映画化したもの。我々俗界でノホホンと暮らしている身にとっては無縁の世界ではあるが、であればこそ惹きつけられる何かがある。エヴェレストの高度5200m付近で大規模ロケを敢行しただけのことはあって、臨場感、音声効果も抜群ならば、ヒマラヤの荘厳な風景も圧巻だ。この迫力は劇場映画なればこそのものだろう。

◆山岳写真家(岡田准一役)がカトマンズの骨董屋でクラシカルなカメラを手に入れるところから物語は始まる。それはあの有名な英国の登山家ジョージ・マロリーが1924年にエヴェレスト登頂に挑んだ時、成功したか否かが判断できるかもしれないカメラだった。マロリーは「なぜ山に登るのか」の問いに対して、「そこに山があるからだ」と答えたことで有名な登山家。英国が国威発揚をかけたエヴェレスト遠征隊に参加。1924年6月の第3次遠征に於いて、彼はパートナーと共に頂上を目指したが、北東稜の上部頂上付近で行方不明となった。マロリーの最後は、死後75年に亘って謎に包まれていたが、1995年5月1日に国際探索隊によって遺体が発見されたという。マロリーが世界初の登頂を果たしたか否かは、いまだに論議を呼んでいる。このこともこの映画の1つの要素になっている。

◆岡田はカメラの逸話を調べるうちに、カトマンズに身分を隠してひっそり暮らす孤高のアルピニスト(阿部寛役)と巡り合う。他人に配慮しない登山をするために、孤高の人物となった彼の壮絶にして崇高な人生に触れるうちに、岡田の胸にある思いが生まれる。この二人の主人公の熱演が観る者をグイグイ惹きつけていく。阿部の目指すものはいまだ誰も成し遂げていない冬のエヴェレストの南西壁に単独・無酸素で登攀しようという無謀なものだった

◆この映画の一般の評価は割れているが、その一端は今の多くの若者達の山に対する畏敬のようなものが、我々の若い時と比べて相対的に低くなっていると思えるからだ。映画の中で岡田が阿部に「何故エヴェレストに登るのか」と聞く。阿部は答えた。「ここに俺がいるからだ」と。この映画は「山の真実は山でしか分らない。高度な技術と体力、精神力を擁し、命を懸けるだけの価値を見出した真の登山家に対して、軽々しく批判することはできない」と教えているようだ。自分の危険は省みず他者を救いに行く場面も、ラストで阿部がエヴェレスト山頂近くで銅像のような凍死の姿で発見されるのも、創る側の想いが凝縮されているように思われ、凄みを感じた。

◆余談だが、自分は「山は登るものではなく、遠くから見るものだ」という情けない考えだが、今まで登った最も高い山はハワイ島のマウナ・ケア(4205m)だ。いや、登ったというより運んでもらったというのが正確だが・・。4000mを超えると何か神聖なものを感じた事だけは確かだ。子供の頃、戦後まだ10年程しか経っていない昭和31年5月、日本の山岳会第三次隊が、先進国に挑むようにヒマラヤの高峰マナスル(8168m、世界8位)の初登頂に成功した。この世界的快挙に国民は大いに勇気づけられた。因みに、1950年代はヒマラヤ登山ブームで、8000m級は殆ど登り尽くされ、未登峰は僅かだったようである。参考までに高度10位までのランクと登頂した年号を列記する。

1位:エヴェレスト(8848m)  1953年  2位:K2 (8611m) 1954年
3位:カンチェンジュンガ(8586m)1955年   4位:ローツェ(8516m)1956年
5位:マカルー(8485m) 1955年     6位:チョオユー(8188m)1954年
7位:ダウラギリ (8167m)1960     8位:マナスル(8163m) 1956年
9位:ナンガバルバット(8125m)1953年  10位:アンナプルナ(8091m)1950年

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