何故短い、力士の平均寿命
◆大相撲九州場所の千秋楽を二日後に控えた今月20日、北の湖理事長の突然の訃報が伝えられた。享年62歳、死因は直腸癌、多臓器不全だったという。それにしても元力士たちはどうして早世するのか。元大関貴ノ浪の音羽山親方は今年6月、心不全のため43歳の若さで急逝した。名横綱大鵬は1977年37歳の時に脳梗塞で倒れたものの、懸命のリハビリで回復。しかし、2013年1月心室頻拍のため72歳で没した。大鵬のライバル第47代横綱柏戸は腎臓病の悪化で1996年12月、58歳の時に他界した。
◆少々古い数値だが、力士の寿命の平均値のデータがある。1980年から2002年の間に死去した100人の幕内力士の死亡時年齢の単純平均は63.6歳だった。この値は2002年の日本人男性の平均寿命78.07歳より15歳近く短命という事になる。昭和の時代に横綱になった人の多くは50~60歳代で亡くなっており、やはり短命と云えるだろう。
◆現役時代横綱になり、引退後協会の功労者になると、還暦を迎えれば「還暦の土俵入り」を行う事が慣例になっている。戦前の37年に初めて第22代横綱の太刀山が披露してから、今年の58代横綱千代の富士(現九重親方)まで、赤い横綱を締めて土俵入りしたのはたった10人しかいない。つまり太刀山以降37人の横綱がいるが、還暦まで生きていた、或いは健康を保つことができた横綱は3割にも満たない。
近年では、「還暦土俵入り」を務めたのは大鵬、北の湖の他に今年5月末、千代の富士が露払い・日馬富士、太刀持ち・白鵬を従え披露した。なお、千代の富士の九重親方は今年7月に早期の膵臓癌で手術を受けていたことを明らかにした。九州場所では元気に解説していたが、国民栄誉賞を受賞した角界の宝であり、小兵・筋肉質の最後の横綱で、大相撲の精神的な伝統を引き継ぐ一人でもある。健康面ではさらなる留意をしてもらいたいものだ。
◆現在の力士の平均身長は184cm、体重159kgだから、これを肥満度BMIで見ると47.0。入門時に80kgそこそこの新弟子が数年後には倍の体重になるのだから、いくら猛稽古をするといっても、カロリー過多には違いない。内臓疾患、尿酸値増に伴う痛風、関節痛、心臓負担などは後を絶たず、肥満によって怪我をしやすい体質になっている。本場所中継を見ても、サポーターや包帯を巻いていない力士は皆無だ。無理に肥満にすることで有利になるスポーツというものはどこかに歪みがでてくるものだ。
◆その結果、180kgも、200kgもある大型のブヨブヨした力士のぶつかりで、突き押しの単純な取り組みが多く、引き、叩き、すかしなどでバターっと前に倒れるあっけない勝負も多い。つまり重すぎる体重を足腰が支えられないのだ。昭和30年代の国技館は栃錦・若乃花などの小兵横綱が土俵狭しと暴れまわり、大型力士投げ飛ばす大ワザを駆使して観衆を沸かせた。若乃花などは土俵際に追い詰められても、足に根が張ったように動かなかった。また栃・若の対戦ではガップリ四つとなり、二度も水が入るという大相撲もたびたび見られた。相撲の質が今とはまるで違っていたように思う。これも戦後の食生活の貧しさもあったのだと思うが、食が豊かになるつれ、相撲の質が変わってきたのは間違いなかろう。
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