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2015年8月12日 (水)

映画「日本のいちばん長い日」を観て

◆この夏話題の映画「日本のいちばん長い日」を観てきた。この映画は当初、昭和42年(1967)に東宝が映画化したもので、48年振りにリ・メイクされたもの。前作は大宅壮一の名で発表された同名のノン・フィクションを、岡本喜八監督、橋本忍脚本、白黒映画で制作・公開された。実際の著者は当時文芸春秋社の社員だった半藤一利で、序文のみ大宅壮一が書いている。今回の「日本のいちばん長い日 決定版」は戦後50年に当たる1995年に半藤氏が前作に手を加え、文春社から刊行されたものを原作に、原田眞人監督により松竹が制作した。

◆ひと口で言うと、この映画は情報の詰め込み過ぎで、目まぐるしいほど早いテンポで展開するので、よく吟味する間もなく終ってしまう。登場人物名のテロップもなければ、ナレーションもないので、予め歴史の事実と登場する人物の知識がなければ、理解するのが困難ではなかろうか。その意味では先日NHKBSで放送された「玉音放送を作った男達」というドキュメント・ドラマや同じくNHK総合TVの「歴史秘話ヒストリア」の「昭和天皇が信頼した男=鈴木貫太郎と終戦秘話」が分かり易い。本映画では大声で怒鳴り合う台詞が多く、効果音(廊下を歩く音、ドアの音、爆裂音等)も必要以上に大きく耳に障り、聞き取りにくい。

◆ただ、昭和天皇をここまで正面から取り上げた映画も珍しい。原作でも天皇は少ししか登場しないが、本木雅弘演じる昭和天皇は気品と言い、役柄といい高貴そのもので、登場する場面も台詞も多く、「天皇が一方の主人公」として見事に仕上げている。
東条英機が土壇場に天皇に拝謁し、敗戦後も日本の軍隊が残るように請願する場面が印象的だった。生物学者でもある天皇を逆手にとったつもりか、「軍隊はサザエ(国民)にとって殻のようなもの。殻がなくなればサザエは死ぬ。日本も軍隊がなくなれば終りである」という主旨を奏上する。すると天皇はサザエの英文名をあげ、「いや英国・米国等はサザエなんて殻ごと捨てるんだよ」と身も蓋も無い返答をする。軍隊を滅ぼしても日本という国を残そうとする天皇を前に、東条は言葉に詰まり黙って引き下がった。昭和天皇に叱責された東条英機が小さく見えた。


◆この映画は天皇の信頼が厚かった鈴木貫太郎総理(山崎努)と阿南惟幾陸相(役所広司)が主人公であるが、阿南の天皇への忠誠と軍人としての責務の間で揺れる心が全篇を通して細かに描かれ、最後は責任をとる形で切腹に至るが、その顛末に至る描写が微に入り細に入り過ぎており、そこまで映す必要があったのか、ただ単に切腹後の姿を発見させる方が、インパクトがあったのではと思うのだが・・。2時間14分という長めの上映時間の中で、説明をできるだけ省き、その隙間に複雑かつ重厚な人間ドラマを詰め込んでいるので、とっつきやすい映画ではなかった。上映中館内で一人の大きなイビキが響いていた。

◆最後に蛇足ながらこの映画に関連して、ネット上に次のようなくだらぬジョークが出ていたので引用する。
Q:「日本のいちばん長い日」は夏至ではござらんのか? 
A:常識的には夏至でござる。しかし文学的には終戦日でござる。

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