« 世界遺産「富岡製糸場」を見学して(2) | トップページ | 壱岐・対馬は長崎県より福岡県? »

2015年6月12日 (金)

世界遺産「富岡製糸場」を見学して(最終回)

◆「生糸」はどのようにしてできるか? 「蚕が繭を作り、その繭から糸を取りだして作ったもの」という程度の漠然とした知識しか持っていなかった。「カイコ」や「繭」は見たことがあっても、成虫の「蛾」は見たことが無い。それもそのはず、人間の長い歴史の中で「絹」を作り出すために家畜化され、成虫は飛ぶことができない。繭の中の蛹(さなぎ)が羽化して、成虫「蛾」になり、求愛・交尾して500~700個の卵を産卵する。その間僅か3~4時間だという。しかも養蚕農家の中での動きだから、一般人が見たことがなくて当然だ。自然界では春に1回だけ産卵するのが通常だと云う。
Dscf1067_2 
体長8㎝ほどのカイコが糸を吐き出し、巣で繭を作り始める。

通常、産卵から孵化して幼虫になるまで9~12日。成長とともに脱皮を4回繰り返して、わずか26日間で体重が1万倍以上の熟蚕となり、糸を吐き出し繭を作り始める。繭完成まで2~3日。そして自分の体を繭でくるみ、繭の中で2~3日かけてとなる。蛹となって10日ほどで羽化し「蛾」になる。そのサイクルの繰り返しなのだが、卵の孵化から産卵するまで、計算上最短で40数日という短さだ。
Dscf1066
人工餌を食べるカイコ

◆明治期は農家の蚕期(餌となる桑の葉の収穫時期)に合わせる必要もあったので、先に述べた「荒船風穴」に低温状態で保存し、必要に応じて蚕種(幼虫)を孵化させ配布した。現在では人工餌も開発され、ほぼ1年を通して年6回以上飼育することも可能だと云う。生産された大量の繭は「富岡製糸場」では羽化しないよう適切な温度管理のもと、東西の倉庫に保管され、生糸の生産の平準化を図っていた。蚕は2~3日かけて約1300m~1500mの1本の繭糸を吐き続ける。その繭糸の太さは髪の毛の1/4ほどの太さだという。
Dscf1068 

生糸絹糸は違うということも今回初めて知った。生糸は繭から最初に取りだされる糸で常に呼吸している。色も白っぽい。生糸をアルカリ性薬品で洗って、表面のニカワ成分を取り除いたものが「」とのこと。こうすることによりあの独特のシルクの光沢がでるのだという。大釜で煮詰めて、光った綺麗な糸が「絹」という訳だ。「蛾」も「芋虫」も見た目は気持ち悪く、嫌いな部類に入るが、人工餌を食べ一所懸命糸を吐き、繭を作っている白いカイコを見ると、少し可愛らしく思えてくる。

◆日本の絹産業は1930年代には40万トンの繭を生産し、外貨獲得の48%を占めていた。当時の日本は農家の約4割が養蚕業に従事し、絹産業が日本の経済発展を支えていた。しかしながらその後、産業構造の変化により化学繊維の進出とともに、養蚕業も衰退、羊毛も綿糸も輸入に頼る日本になってしまった。今や美智子皇后が伝統文化の維持のため、養蚕をやっているだけなのか?
」の自給率は、「食」の自給率の比ではなく、なんと1%以下になっているという。東京農大の長島孝行教授は「日本の蚕・シルクの研究レベルは世界一といってよい。加工技術の進展で新たなシルク製品も続々誕生している。さらにシルクを作る生き物はカイコに限らず世界中に10万種いるという。それらは無限の可能性を秘めており、繊維としての利用に限らず、ナノ・テクニックの特殊研究で全く新しい地球にやさしい技術革新が期待できる」という。こういう研究にこそ国は資金をつぎ込むべきだろう。(本稿終わり)








« 世界遺産「富岡製糸場」を見学して(2) | トップページ | 壱岐・対馬は長崎県より福岡県? »

旅行・地域」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1299847/60355086

この記事へのトラックバック一覧です: 世界遺産「富岡製糸場」を見学して(最終回):

« 世界遺産「富岡製糸場」を見学して(2) | トップページ | 壱岐・対馬は長崎県より福岡県? »

2016年11月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30      

最近のトラックバック

無料ブログはココログ