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2015年5月 6日 (水)

不毛の憲法論議を糾す

◆5月3日は憲法記念日だったが、憲法論議そのものは低調だったようだ。憲法論議は詰まる所、第9条に謳われている【戦争の放棄と戦力及び交戦権の否認】条項をどうするかに尽きる。即ち、「日本国民は国際平和を心底から望み、戦争はもちろんのこと、国際紛争を解決する手段として、武力による脅しや使用も永久に放棄します。そのためには陸海空その他の戦力は持ちません。国が戦争する権利も認めませんよ」という世界に類を見ない平和憲法だ。この憲法の精神に異を唱える人は一人もいないだろう。

◆一部の野党やメディアは「改憲論者は戦争を自らできるように変更しようとしているのではないか」などと批判する。また民主党のある幹部は「国家権力を縛るのが憲法の基本精神だ。勝手な真似は許さない」と息巻く。確かにそうした一面を持っていることは否定できないが、その前に憲法とは主権在民であれば国民が「国の在り方、基本形」を決めるものだ。その中で国家権力にも自ずと足枷が掛かってくるもの。明治憲法みたいな不磨の大典ではない。時代の変化、国民の要請があれば改正されても不思議ではない。

◆いわゆる護憲論者と言われる人達はこの崇高な精神を守り通すため、一言一句たりとも変更罷りならぬと主張する。一部野党、一部のメディア、識者と言われる人達の多くはこの論調に与し、憲法に手を付けることが、即戦争への途へ繋がる事だと正義の味方を装い、あるいは被害妄想気味に主張する。では、その理論を突き詰めていけば「今の日本は戦力を保持していないのか」という問題に突き当たる。自衛隊は外国から見ても、まさしく陸海空軍その他の戦力そのものだろう。「既に日本は憲法違反をやっているではないか」という指摘にはどう答えるのだろうか。

◆その指摘に対しては「憲法は自衛のための戦力保持までは否定しない」という答えを出すだろう。即ちそれこそ苦しい憲法解釈だ。他国が離島などの我が国の領土に侵略した場合でも、憲法は武力の行使、交戦権を認めていないのだから、蹂躙されるまま黙認するのが正当な護憲論者の在るべき姿だろう。ところがいざ、そうした現場に遭遇したら、「自衛隊は何をやっているのだ」と批判するだろう。それが全うな日本人の姿だ。こういう場合でも現実を想定せず、憲法解釈で乗り切ろうとしてきたのが、戦後70年、新憲法施行後68年の日本の姿だった。自衛隊の前身警察予備隊が発足(1950年7月)した1年半後、韓国が勝手に李承晩ラインを設定して、竹島を取り込んでしまった。戦力と呼べる力も無く、平和憲法も施行したばかり、日米安保も発効する前、まさに絶妙のタイミングを見計らって占拠されてしまったのだ。

◆戦力不保持、無抵抗の国が被る一例だが、真に平和を希求し、戦争反対を貫き、憲法9条を死守するというのならば、国の防衛政策にも、個別自衛権・集団的自衛権に関わらず全てに反対し、自衛隊も武器も廃絶、世界には核廃絶を働きかけ、インドのガンジーのように無抵抗運動を実践することだ。そのような覚悟を持って、世界中に示さなければ、説得ある主義主張とは言えまい。口先だけの護憲や平和など誰も信用しない。仮に日本がこの絶対平和主義を貫いていったとしたら、戦前の軍部の極右主義の行動が日本を滅亡に追いやったと同様に、逆方向から日本を滅亡させるかもしれない。日本を取り巻く環境は一国平和主義を認めるような甘い環境ではないからだ。

◆憲法改定論議でも結局時間ばかり喰って、白黒をはっきりつけようとしない。事を決めるにあたって「曖昧、うやむやのままにして置く」ということが日本人の欠点でもあり、美点でもある。しかし、為政者は戦争を起こさせないような国際関係の構築に努力を重ねる一方(国際貢献もその一つ)、万が一の緊急事態の発生を想定して、国民の生命と財産を守る手段を講じておかなければならない。そのために憲法の条文と矛盾があってはならないのだから、政治家もメディアも真面目な憲法論議をしてもらいたいものだ。

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