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2010年3月 3日 (水)

島崎藤村と「千曲川のスケッチ」 (1)

人は誰も青春の一時期、文学的になることがある。
ただ、歳を重ねるごとにそうした一面は次第に剥げ落ちていく。
小生も人生半ば以上過ぎた今、文学を論じることはまずないが、多感な
高校時代に出会った小説や詩歌の中でも、藤村の「千曲川旅情の歌」は
格別な思いがある。最近、藤村が書いた「千曲川のスケッチ」という散文集
を読んだが、なるほどあの名作の下地にこのような背景があったのだと
いうことが分かった。藤村は明治32年27歳のとき、信州小諸の私塾に
国語、英語の教師として赴任する。東京に戻るまでの6年間に、北信州
の風土、気候、人情などをまるで絵筆でスケッチしたように、文章できめ
細かく描写している。それまでの詩歌の世界から小説の世界へ移行する
過程であった。今の季節にピッタリの感じがするのでここに引用する。

       「小諸なる古城のほとり」
  
小諸なる古城のほとり    雲白く遊子悲しむ
  緑なすはこべは萌えず    若草も藉くによしなし
  しろがねの衾の岡辺     日に溶けて淡雪流る

  あたたかき光はあれど    野に満つる香も知らず
  浅くのみ春は霞みて     麦の色わずかに青し
  旅人の群れはいくつか    畠中の道を急ぎぬ

  暮れ行けば浅間も見えず  歌哀し佐久の草笛
  千曲川いざよう波の     岸近き宿にのぼりつ
  濁り酒濁れる飲みて     草枕しばし慰む
                             (以下続く) 

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